オートバイ

バイクの最高速度の求め方(考え方編)

別記事http://megro-aquarius29.com/?p=322で最高速度を求める計算式を紹介しましたが、ここでは、計算式を使わずに一つ一つ考え方を説明したいと思います。

STEP1

まず、速度とは、進んだ距離を、要した時間で割った値です。
そして、乗り物の速度の単位で一般的に用いられるのは時速[km/h]ですね。

(キロメーター パー アワー)は1時間に何km進むかという意味ですから、例えば60km/hでは1時間に60km進む速さという意味です。2時間では120km、3時間では180km進みます。

図1.1 タイヤ1回転で進む距離

まずはタイヤをイメージしてみましょう。タイヤを真円と考えると、タイヤが一回転する間に進む距離は、タイヤの円周長に等しいです。

タイヤの円周長を求めるには、タイヤの直径に円周率πをかけてやればOKです。あとは、タイヤが一回転するのに要した時間が分かれば、速度が計算できます。

STEP2

そこで、必要になるのが、エンジンの回転数とトランスミッションのギヤ比、減速比です。

エンジンの回転数の単位には[rpm](レボリューション パー ミニット)が用いられ、これは、1分間あたりのエンジンの回転数を示しています。

例えば6000rpmなら、1分間にエンジンのクランクシャフトが6000回転するという意味です。

ただし、エンジンの回転はトランスミッションや減速機を介してタイヤに伝わりますので、最終的なタイヤの1分間あたりの回転数はエンジンの回転数よりも低くなります。

タイヤが1分間に何回転するかがわかれば、毎分の進む距離が出ます。

図1.2 トランスミッションと減速機

図1.2ではエンジン側、トランスミッション、減速機(タイヤ側)の歯車の直径(歯数)が等しくなっていますが、実際は各々直径(歯数)が異なります。

トランスミッションの役割

トランスミッションとはエンジンの力(トルク)を効率良く使う為の機構です。バイクや車は動き始める時に最も大きな力を必要とします。

マニュアル車の運転では発進時に1速を選択しますよね。これは、1速が最も大きな力を伝達できるからです。その代わりに、1速では速度は伸びず、より速度を上げたければ、2➡︎3➡︎・・➡︎6速という順番にシフトアップする必要がありますね。

シフトアップしていくと、速度が出るようになりますが、その分、力の伝わり方は弱くなっていきます。

図1.3 トランスミッションとトルク・速度の関係

図1.3において、エンジン側ギヤとトランスミッション側ギヤの半径の比(ギヤの歯数の比)が1:3の場合、エンジン側ギヤが3回転するとトランスミッション側ギヤが1回転します。

逆に言えば、エンジンが1回転に対し、トランスミッションが1÷3=1/3回転と言うことです。回転数は1/3倍に、トルクは3倍になります。

同様に、歯数比が1:0.5の場合では、エンジンが1回転する間に、トランスミッションが2回転します。この場合、回転数は2倍に、トルクは1/2倍になります。

次に、減速機とは、文字通り、ギヤの回転数を減速する為の機構です。エンジンの回転はトランスミッションを介してタイヤに伝達されますが、そのままの回転数では速度が速すぎるので、減速して実用的な回転数まで落とす必要があるのです。

ここで、GSR400のギヤ比(変速比)と減速比を参照すると、以下の様になっています。
変速比
1速 2.785
2速 2.000
3速 1.600
4速 1.363
5速 1.208
6速 1.086
減速比
1次 1.926
2次 3.357

1速の変速比が2.785となっていますが、これは、エンジンが2.785回転する間にトランスミッションが1回転するという意味です。

同様に2速ではエンジンが2回転するとトランスミッションが1回転・・・6速ではエンジン1.086回転に対し、トランスミッションは1回転することを意味しています。

最高速が出るのは、6速走行時ですから、ここでは、6速のギヤ比を使います。

また、最高速はエンジンが最高出力を発揮する時に出るとすると、GSR400のエンジンは12000[rpm]で45kWの最高出力を発生しますから、回転数は12000[rpm]を用います。

エンジンが1分間に12000回転する間に、6速のギヤは12000÷1.086≒11050回転することになります。

更に減速機(1次、2次)の減速比はそれぞれ1.926、3.357なので、タイヤの回転数は12000÷1.086÷1.926÷3.357≒1709[rpm]
つまり、エンジンが1分間に12000回転する間にタイヤは約1709回転するということです。

STEP3

次にタイヤの円周長を考えてみましょう。ここで必要になるのが、タイヤの偏平率とホイールの直径です。

メーカーのHPを参照すると、GSR400の後輪は180/55ZR17M/C(73W)と記載されています。これは、タイヤの幅が180[mm]、ホイールサイズが17inchでタイヤの偏平率が55[%]であることを示しています。

後輪ホイールの直径17[inch]を[mm]に変換します。1[inch]=25.4[mm]ですから、17[inch]=25.4×17=431.8[mm]です。

次に、偏平率とは、タイヤの幅(接地する面の幅)に対して、タイヤ側面の厚さが何%であるかを意味しています。

いま、GSR400のタイヤ幅は180[mm]、偏平率は55%ですから、タイヤ幅180[mm]の55%の厚さがタイヤ側面の厚さになります。

計算すると、180×0.55=99[mm]になります。バイクのタイヤは接地面が真っ平らではありませんが、直線を走ることを前提で考え、タイヤの直径が一番大きい部分で考えます。

図1.4 タイヤ円周長の求め方

いま、タイヤ部の直径はホイール直径431.8[mm]+タイヤ側面の幅99[mm]×2=629.8[mm]になります。そうすると、円周長は629.8[mm]×π≒1978.58[mm]になります。これは、タイヤが1回転で進む距離になります。

先ほどの計算から、エンジンが一分間に12000回転する間にタイヤは約1709回転しますので、タイヤが1回転で進む距離1978.58[mm]×1709[rpm]=3381393.22[mm/min]になり、これは、タイヤが1分間に3381393.22[mm]進むことを意味しています。

しかし、これではピンとこないので、もっと馴染みのある単位に変換します。

これを時速[km/h]に変換します。いま、

$$1\rm{[mm]}=10^{-6}\rm{[km]}\\3381393.22\rm{[mm]}=3381393.22\times10^{-6}\rm{[km]}=3.38139322\rm{[km]}$$

なので、タイヤの速度は3.38139322[km/min]となり、1分間におよそ3.38km進むということです。

1時間あたりでは、3.38139322[km/min]×60[min]≒202.88[km]となります。つまり、GSR400の最高速度はおおよそで202.88[km/h]ということがわかりました!

ただし、この値は非常に大雑把に計算したものなので、実際には、車両と乗車する人間の質量、路面との摩擦係数、ころがり抵抗、加速抵抗、ギヤの動力伝達ロス、空気抵抗、勾配抵抗、ライダーのメンタル?・・など加味しなければいけないパラメータがたくさんあります。

これらのパラメータを加味して、理論上の車速が求められるのかどうか、現在勉強中です(笑)

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